Q1.そもそも流氷とは、どういうものですか?

 海の水が凍った氷が海氷です。専門用語では、流れ漂っている海氷は流氷といい、岸にくっついて動かない海氷は沿岸定着氷とよんで区別します。しかし、一般用語(話し言葉)では、広い意味で、海の氷すべてを流氷とよんでいます。
 流氷は気温が低いほど早く厚くなります。北海道付近の海では冬の終わり頃には、30数cmに達します。ときには、重なり合って、数mの氷の山ができることもあります。



Q2.流氷は、どうやってできるのですか?

 真水は0度で凍ります。海水は塩分を含むので凍りにくいのですが、マイナス1.8度まで冷えると凍り始めます。最初に海水中の真水の部分が凍った 氷晶とよばれるちいさく薄い氷の板が発生します。これは軽いので、浮き上がって海面をおおって薄い膜になります。寒い日が続くと、やわらかい氷の膜は、硬さを増して薄い氷の板になります。やがて、氷の底面に接した海水が次々に凍って厚くなっていきます。
 少し厚くなるとやや固い氷の板になり、波やうねりで割れて円盤状の“はす葉氷”になります。寒さが続くと、隙間の水も凍って、広い氷野になります。



Q3.流氷はどこで見られるのですか?

 北半球では北極海とその周囲の海が凍ります。これ以外では、スウェーデンとフィンランドで囲まれたバルト海、オホーツク海、その東側のベーリング海などが凍ります。東シナ海の奥のぼっ海湾の一部も凍ることがあります。
 南半球では、南極大陸の周囲の海、南極海(南氷洋)が凍ります。北極海は周囲が大陸や島々で囲まれているので流氷も閉じ込められていますが、南半球の流氷は外へ広がっていきます。



Q4.なぜ、オホーツク海はこおるのですか?

 冬、真水の池や湖は、上下の水は、混ざることなく(対流することなく)表面から冷えていき、そのまま表面から凍り始めます。ところが海は上下の水が混ざりながら、次第に深くまで冷えていき、全体がマイナス1.8度になってからようやく凍り始めます。だから海は深いほど凍りにくいのです。
 オホーツク海の深さは平均830mです。この水が混ざりながら底まで冷えるとすると、一冬の寒さでは凍る前に春がきて、とうてい海は凍らないはずなのです。
ところが、オホーツク海は、表面50mは塩分の薄い軽い水でおおわれ、その下に塩分の濃い重い水がある二重構造の海です。だから、混ざり合い(対流)は50m程度で止まってしまうのです。凍るという面では オホーツク海は50mの浅い海といえます。
 これに対して、日本海や太平洋は、対流がずっと深くまでおよぶので、凍り始める前に春がきて、流氷はできないのです。毎年、オホーツク海を底から混ぜてやると流氷は生まれなくなるでしょうね。



Q5.流氷って、何かの役にたっているのですか?

●大気の大循環:
 冬、真ん中にストーブが燃えている部屋を頭に描いてください。ストーブ(熱帯)の温かい空気は軽くなって天井(上空)へ上がります。一方、冷たい窓(極地)の空気は冷やされて重くなり地表へ下りてきます
 こうして空気はぐるぐるとい部屋を回ります。空気を回す力(駆動力)はストーブと窓の外の温度差から生まれます。
 地球は大気(空気)ですっぽりと包(つつま)れています。赤道付近(ストーブのそば)は、太陽の熱をたくさん吸収しますが、極地(窓)は少ししか受け取りせん。地球を包む空気も部屋の空気と同じように、熱帯と極地の温度差で動かされます。
 さて、極地の海は流氷でおおわれます。流氷は白いので太陽のエネルギーを反射して、温まらず、極地の寒さを増す働きをします。寒いというとマイナスイメージがありますが、地球の空気の流れを作り出す重要な働きをしているのです。もしも空気が動かなかったら、赤道は暑くる一方、極地は寒くなる一方で、今のようなたくさんの動物や植物が生きける環境はできないのです。

●海洋の大循環:
 缶(かん)ジュースを冷やし過ぎると、缶の中に氷ができますね。氷はジュースの中の真水の部分が凍ったものなのであまり味がしません。残ったジュースを飲んでみてください。すごく濃(こ)いジュースになっているはずです。
 海水も解(と)けている塩分を、吐(は)き出しながら厚くなっていきます。吐き出された塩水は、塩分が濃い上に、冷たいのでまわりの海水より重く、海底へ沈んでいきます。深層(低層)水の誕生です。この深層水は深層流となってゆっくりと赤道へ向かって浮かび上がります。入れ替わって熱帯の温かく軽い水がゆっくりと極地へ向かいます。海洋の大循環(じゅんかん)です。海水はたくさんの熱を含むことができるので、熱帯の暑さを和らげ、極地の寒さをゆるやかにしてくれます。
 流氷は地球のエアコンの役をしているのです。

●プランクトンのゆりかご:
 畑や牧草には肥料(養分)が必要ですね。海の養分は海水に解けていて、少しずつ沈んでいき、底の方にたまっているのです。流氷が成長するときに塩分の濃い水が沈み、海水をかき混ぜます。だから流氷の海は養分が豊かです。流氷の内部や底には、この養分を吸収してプランクトンが育ちます。これを小魚が食べ、これを大きな魚やアザラシ、トドが食べ、・・・・海鳥が食べ・・・・。流氷は豊かな海を育てる役割もしているのです。



Q6.紋別の人と流氷の関わりについて教えてください。

 流氷がくると漁に出られません。水産加工場も魚がなければ仕事ができません。一昔前まで紋別のおとうさんたちが冬になると都会に出稼ぎにいきました。また、漁業の網を壊したり、コンブを引きちぎったりすることもあります。ときには流氷遭難で船が沈没することもありました。流氷には困る面もあるのです。
 しかし、いま人々は流氷が海を豊かにする大事なものであることに気がつきました。漁師の人々も流氷の多い年はホタテの実入りがいいともいいます。
 昔の邪魔(じゃま)者の流氷が、いまは大切な観光資源です。紋別市は、オホーツク流氷科学センター、オホーツク・タワーや砕氷観光船ガリンコ号などをつくって市を発展させようと努力しています。



Q7.流氷の魅力について聞かせてください。

 青い海が白い氷野に姿を変え、また、青い海へ還(かえ)る。流氷の海には、広大さ、明るさ、静かさがあります。人々に人生のこと、地球の環境のことを考えさせるふしぎな力を秘めているように思えます。



Q8.流氷が減っているって本当ですか?

 今から110数年前の1892年、網走測候所(現在の網走地方気象台)は、日本で最初に本格的な流氷観測を始め、現在も続けています。これは世界で一番長い流氷の連続観測で、世界に誇るべき財産です。
 これによると、短期間の激しい変動を無視して、長期的な傾向をみると、この約100年余の間に、オホーツク海・北海道沿岸の流氷の面積、流氷期間は減っています。100年前に比べて半分近くに減っています。



Q9. 流氷に地球温暖化の影響はありますか?

 北極海の流氷も明らかに減っています。ヒマラヤやヨーロッパの氷河も後退しています。流氷の減少、増加は気温に支配されます。これはオホーツク海一帯の温暖化の結果であることは疑えません。これが地球全体の温暖化を示しているとは断言できませんが、少なくともその警告と考えるべきではないでしょうか。



Q10.流氷を守るために必要なことは?

 無駄な電気、歩ける範囲なのにすぐ車、夏の冷やし過ぎた部屋、冬の暑い過ぎる部屋、・・・。自分自身の日々の暮らしの中に反省する点がたくさんあります。
 また、地球の反対側の海の魚、牧場の肉を食べることは、それを運ぶ船、飛行機の油も食べていることになります。地産池消(できるだけ地元で生産されたものを消費しようという運動)が大切だと思います。食べ物の場合は、新鮮で安全で安く、油の浪費も少ないので地球環境保全にも役立ちますね。
 私たち人類は、あまりにも物質的豊かさを追い求め、心まですり減らしながら、生きてきました。その努力の結果が地球温暖化を引き起こしたといえるでしょう。
地球も人のこころも病んでいます。流氷の海を眺めながら、人間のほんとうの豊かさとは何かを考えたいと思います。自らの反省を込めて。